![]() ジュリアの作品を初めて見たのは、二年近く前に自宅兼スタジオを訪れた時。 暖炉の前に、無造作に床に置かれている作品群は、巨大ハリネズミが白いプラスターで覆われたようだった。思わず、手が伸びてしまった。「触ってみて」とジュリア。 触れてみると、どこか骨の表面を撫ぜているような錯覚に陥った。父の一周忌を終えたばかりの私は、骨の感触が何となくまだ手に残っていた。ジュリアに言うと、「このテキスチャーに私も骨を意識したの。私も最近父を亡くしたのよ」。なんて偶然。 割り箸のような木の棒と、小さい子供がお風呂に浮かべるようなプラスティックのボールがワイヤーで複雑に絡み合っている。その絡み合い方には何のパターンもない。放っておいたら、その絡み合いで床が埋まってしまいそう。何だか宮崎映画に出てきそう,な。それを、真っ白なシルク石膏が覆う。 私は、シルク石膏のその白さが凄く気になった。真っ白で、日の光で色が変った。西日が当たれば暖かみで流れるように見えるし、室内の照明があたっているところは、青白く光り、影もつくる。 この真っ白で自由変化な作品は、去年、ルシアントテラスギャラリーに展示された。 その時、ジュリアは、「ルシアントから、『絡まり合った中を出してみたら』と言われているの」と言っていた。 2016年6月2日、チェルシーのウィンストンワチターギャラリーで始まった展示『2016 喉からの叫び』ー 2016 Scream in My Throat ーシリーズは、絡み合った中身が、シルク石膏を突き破っている。 私が、今回の作品の中で、一番好きだったのはこれ。石膏が抑えきれずに、覗いている中身は、円形プラスティック板が一枚突き出し、白い玉と針金が散らばってる。 ジュリアに、「あれ、好きだわ。抑えきれない感情を、石膏が繊細に覆ってる」と言うと、「繊細? 私は繊細だと思ったことがなかった。あれは、昨日まで私が格闘していた作品よ。本当に繊細に感じるの?」とジュリア。私、「うん」。一緒にいった友人も、「日本の雪景色を思い出すわ」と、ジュリアに言う。判る気がする。白いから雪景色に繋げたわけじゃない。その作品は、白い石膏からしんしんとした静けさを感じるのだ。 これぞアートの醍醐味。見る人で感じ方も違う。コミュニケートしてくるのをどう受け止めるのは、観ている人次第。 ジュリアの作品、手元に置きたい。でも、今のところ、手が届かないけど。 7月29日まで展示されているので、行ってみてください! http://newyork.winstonwachter.com/artists/julia-von-eichel/ |
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June 2016
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