![]() 100人以上のミレニアル・ニューヨーカーが相撲を観ながらちゃんこ鍋を突っつく姿を、10年前に誰が想像しただろうか! ウィリアムズバーグにあるブルックリン・ブルーワリー。NYに住む人も、観光でブルックリンに行ったことがある人も、このブルーワリーを訪れたことがあるのではないだろうか。 今ニューヨークはご当地ビールならぬ個性ブランドビールが大ブームだが、先駆けはこのブルックリン・ブルーワリーだろう。(でも最近IPA—インディアペールエール—が人気なのよね〜。やっぱりビールはラガー、という私は、ブルックリン・ブルーワリーはラガーも出してくれているので嬉しい)。 1月20日に開かれたスモウ(相撲)パーティー(Sumo Party)の仕掛人は、ブルックリンキッチン(The Brooklyn Kitchen)のオーナー、ハリー・ローゼンブルムさんとフードライター/フォトグラファーのマイケル・ハラン・ターケルさん。 前回の九州場所スモウパーティーに参加した友人の話によると、その時の会場はブルックリンキッチンで、定員50名のところに80名が押し寄せ、立ち見が出るほどだったそう。 そこで、会場をブルックリン・ブルーワリーにして、それでも定員の100名は完売。会場では、十両からの相撲中継が、プロジェクターからスクリーンに映し出されている。 参加費は50ドルで、お弁当、ちゃんこ鍋、ドリンク一杯が付いてくる。そしてブルーワリーからビール一杯もおまけ。 ![]() .さーて、お弁当の中身は、というと、アイバンラーメン(Ivan Ramen)から大根酢の物、ユージラーメン/オコノミ(Yuji Ramen)から鰊南蛮漬け、シャロムジャパン(Shalom Japan)から八丁味噌なす田楽、ガンソ/ガンソヤキ(Ganso)から豚揚げ焼売、奈良県から奈良漬け、と、アイバン以外はブルックリン居酒屋のそうそうたる顔ぶれ、プラス奈良漬け弁当だ。 そしてちゃんこ。ちゃんこ鍋をスモウシチューと命名し、当日現場で調理。ちゃんこは、ブルックリンの居酒屋モクモク(MokuMoku。モモスシシャックMomo Sushi Shackは姉妹店)と、マンハッタンローワーイーストサイドの居酒屋アザス(Azasu。よっぱらいYopparaiの姉妹店)が担当。 モクモくのちゃんこは、つくねとキノコがふんだんに使われていて、柚子胡椒をちょっと入れて食べる。つくねは、オーナーさんが説明してくれたのに、すっかり忘れてしまったが、鶏肉で有名な産地の新鮮鶏ひき肉を、キノコは自然栽培の採りたてを使用。アザスのちゃんこは、ベジタリアン。豆乳スープに油揚げ、ニラの彩りがきれい。 モクモくのちゃんこが出来上がったと同時にニューヨーカーは列をなし、100人以上いるんだから、売切れごめんになったら困る、と、私と主人も列に並ぶ。 やっと次、となった時、目の前のカップルにモクモクオーナーが柚子胡椒の説明を始めた。説明されてもまだ不思議そうな顔をしている二人に、日本人の口から聞いたらきっと説得力が増すだろうと思って、私が、「柚子胡椒、我家ではローストビーフとかにも付けるし、オリーブオイルをちょっと入れて豆腐にも付けたりして、万能よ」とコメントすると、彼女が「そうなの?どこで買えるのかしら?」と反応。そこでモクモクオーナーは、彼氏の方に、「ちょっと食べてみたら?」と柚子胡椒をスプーンにとって彼の口へ。「え、そんなに一度に食べたら辛い!」と思ったのも束の間、「ワオ。ホット(辛い)だね。でも体験したことない味で美味しい」と、ちゃんこの中に柚子胡椒を入れてテーブルに戻って行った。 アザスのベジタリアンちゃんこも行列。残念ながら私達はありつけませんでした。 ![]() ドリンクで、私が気に入ったのが、ニッカカフェグレーンを使ったサクソンアンドパロル(Saxon+Parole)のハリテパンチ(ネーミングも面白い)。 日本の柑橘(多分、伊予柑。違ったらごめんなさい!)が入ったドリンクで、シンプルに美味しい!、と思ったカクテルは久しぶり。なかなかのカクテルは沢山飲んだけれど、「ちょっとやりすぎ?」という感も否めなかった。が、このカクテルは甘くなく、柑橘がほのかに香り、でもカフェグレーンウィスキーの奥行きと絶妙なマッチで本当に美味しかった。 カフェグレーンをストレートでちょっと飲んでみたが、ウイスキー好きなら、これは一家に一本は欲しい。周りにウィスキー好きのアメリカ人男性結構多いので、早速勧めてみよう。 彼らは響、山崎、白州は持っていて、お宅にお邪魔すると出してくれるけど、ニッカはマイナーだ。朝ドラ『マッサン』が大好きだった私は、ニッカも何とか応援したい。 ![]() このイベントに参加して思うのは、アメリカ人の日本に対する愛だ。 イベントで食を提供しているレストランのオーナーの殆んどはアメリカ人。出店していた日本酒や日本茶の専門家もアメリカ人がいる。彼らは、皆口を揃えて、「日本には数回行っているよ。とにかく日本が好きなのさ」、と言う。彼らの日本への愛情/情熱は、単に食材、飲料、料理への興味以上のもののように思う。 仕掛人の一人、ブルックリンキッチンのオーナー、ハリーに聞いてみた。 「日本に行くと驚かされる。そして感じるものがあるんだ。日本で包丁の産地にも行ってみた。職人達の、包丁、生産過程へのこだわりと、質の高さには感動だった。相撲だってそうだよ。僕はスポーツは観ない。でも日本で相撲を観た時に、このスポーツの洗練された複雑さに感銘を受けたんだ。 NYに戻ったら、ストリーミングで相撲が観れることが判って、ニューヨークの多くの人に楽しんで貰いたいと思った。それがこの会を始めることになったきっかけさ。」とのこと。 私なんて、アメリカ人の主人が大の相撲好きで、友達に一生懸命魅力を語っているのに、「アメリカ人が相撲に興味持つ訳ないでしょ!」なんて、冷たい目で観ていた。 それなのに、ハリーは情熱で、多くのアメリカ人に日本の相撲/文化を伝えているのだ。 何となく思う。ジェネレーションXのアメリカ人達は、「日本経済が脅威になる」と言われた時に学生だった。それで日本語を学び、日本にも行った。日本に来てみて、日本が好きになった人達も多いと思う。 でもミレニアル達は、子供・思春期時代に本人が日本にすごく興味を持った。アニメやバクガンがきっかけだったとしても‥。 12歳の息子が小学生の時に、友人達から「日本はクールな国だね」とか「日本に行ってみたい」と良く言われていた。去年の歴史のクラスで、東アジアスタディを選択し、中国、韓国、日本の近代の歴史と関係を勉強した15歳の娘は、「クラスメート(約20人)の中で日本に興味を持っている人が一番多かった」と言っていた。 ニューヨークで日本語の先生をしている人達に聞いても、ビジネスで役に立つ言葉ではなくなった今となっても、バブル時ほどではないにしても、日本語の人気は落ちていないらしい。とある大学の日本語の先生は、「ある学生は、日本語を続けたかったのに、親に、『役に立たない言葉だ。学費を払っているのは親なんだから、中国語に変えろ』と言われて、泣く泣く諦めた」、と言っていたが。 一緒のテーブルに座った、20代の男性二人に聞いてみた。「どうして今日、来ようと思ったの?」って。一人はあか抜ける前のキアヌ・リーフ似のオーストラリア人で、NYにいる友人を訪ねて滞在しているらしく、その彼は、「日本が好きなんだ。食、文化、全てに興味がある」。そして、そのニューヨークに住むロバート・パティンソン似の友人の方は、「日本が好きで、日本にも行ったんだ。僕が一番好きだったのは高野山で、宿坊にも泊まったよ」と、iPhoneの写真を見せてくれた。 ![]() 相撲もいよいよ横綱戦。 それまで食に集中していた参加者も、顔を画面に向け、声援している。その日は、琴奨菊が白鵬を倒した番狂わせがあった日で、座布団が飛んでいるのを、「What is going on?どうしたの?」と不思議そうに観ている。 確かに字幕もないし、相撲のことを知らないと、なんで突然、紫のクッションが飛び交っているのか謎だっただろう。でもそこは、お祭り気分大好きなアメリカ人のこと。何かエキサイティングなことが起こっている画面を観ながら歓声をあげていた。 弓取り式の時には、もう夜の11時。 一緒に行ったアメリカ人の友人が、「みきって意外に相撲に詳しくない?」と一言。 ばれた。そうなんです。子供の頃、父親と一緒にこたつに座って良く観ていました。先代貴ノ花の大ファンだった私。 何かノストラジックにもなり、アメリカ人が日本をプロモートしていることにも感動し、料理もお酒も美味しく、良く笑い食べて飲んだ。 大阪場所は行けないけれど、五月場所はまた絶対参加しよう。その時には会場がもっと大きいところになる可能性もなきにしもあらず。スモウシチューのこれからも楽しみだ! *スモウパーティー関連サイトはこちら。 ブルックリンキッチンのスモウパーティサイト:https://www.thebrooklynkitchen.com/sumo-party-16032358201 スモウシチューのFacebookページ:https://www.facebook.com/sumostewparty/ (次回は2月15日に掲載します。NY時間の場合もあるので、16日になるかもしません。Keep checking in!) |