![]() 今回のニューヨークキッチンは、マンハッタンアッパーウエストサイドから。 この2月にキッチンレノベーションを終えたばかりの、恭子さんとロイのお宅。 恭子さんは、NYの由緒ある料理学校、The French Culinary Instituteの卒業生。卒業後は、マンハッタンレストランの老舗高級レストラン、ダニエルのケータリング部門で活躍した後、JPモルガンのエグゼクティブダイニングで腕を振るう。 キッチンレノベーションでは、材料一つ一つに拘り、ショールームやお店に直に足を運び、タイル一枚から、一点一点ロイと一緒に選んだ恭子さん。 お二人のこだわりキッチンについて恭子さんに聞きました。 ![]() ー レノベーションで一番重要だったポイントはなに? レノベーション前は、ワークスペースが少なかったので、。ワークスペースを多く取ることがとても大切だった。建築家の人と相談しながら、ベッドルームにつながるドアを壁にして、カウンターを設けてワークスペースを増やしました。 ー カウンタースペースに大理石を選んだ理由は? 大理石は、ペイストリーの生地をこねる時に生地を直に置いてこねられるの。それに年を重ねるごとに味を重ねる素材なので、家族と一緒に歴史を重ねられる。人によっては、染みになりやすいとか、欠けやすい等で大理石を敬遠する人もいるけれど。 ー 家電が少ないですね。 電子レンジは初めからもっていなかった。炊飯器も改装と一緒に処分しました。ガスを使った料理をしたいので。 ー バックスプラッシュは何にこだわった? 白のセラミックのタイルにすることは初めから決めていました。カラーは食器などで後から加えられるから、なるべく色味は抑えようと思っていたのね。 このタイルは手作りで、一枚ずつが微妙に違うの。摩耗の度合いが違ったり、表面の曲線具合が違ったり。なので、バックスプラッシュで壁に貼られた時も、インダストリアル的なのっぺり感がなくて暖かみ、深みが出る。 チェルシーにある、Waterworksのショールームで、一枚ずつ手作りのタイルを10枚程貼っている見本があって、それを見た時にいいなぁと思ったの。暖かみが違った。一枚ずつ違うから、光の当り方跳ね返り方も違って来るでしょう。 ![]() ー キャビネットも白ですね。 キャビネットの色を白にすることにはこだわっていたの。自然素材を使いたかったので、木を使うことにこだわったけれど、木の色だと暗いかんじになるので、キャビネット制作会社と色々相談して、ドアは木を使い白のペンキを塗りました。でも全部木のドアだと圧迫感が出てしまうので、所々にグラスを使ってアクセントをつけました。 床にもこだわったのよ。リクレイム(昔使われていた)の木を使ったの。リクレイム専門の材木屋(ランバー)のショールームがチェルシーにあって、そこに通って選びました。 リクレイムの木は使っているうちに個性が出て来るでしょう。例えば、この床のこんなところに釘の後があって、みたいな。無機質なものには惹かれないのよね。 ![]() ー ガステーブルもなぜか無機質さを感じませんね。 ガステーブルを選ぶ時もリサーチを沢山したわ。以前使っていたのは、温度設定がコンピューターのもので好きに慣れなかった。 Wolfのガステーブルは全部マニュアルで、自分の感覚で温度設定ができるのが気に入っているの。オーブンの温度もコンピューターで設定しないで、このダイヤルをひねっての温度調整なのよ。コンロとして実直な仕事をします、という感じでしょう。作りがシンプルな方が長持ちするし。 以前一緒に働いていたシェフが、ケータリングの仕事で色んなお宅で料理をしていて、その彼に、どのメーカーのガステーブルが好きか聞いたら、「僕が自宅用に買うんだったら、Wolfにする」って言ったのね。その意見も参考になったわ。 ![]() ー 自分の道具の中で好きなものは。 ついつい手が伸びてしまう道具は木べらかな。何年も使っているから形も変ってきているのだけれど、鍋底をかき回している時に木べらだと料理をしている感がある。この木べらはシュークリームを作る時に鍋底からクリームをかき寄せる時のために買ったの。シチューやスープを木べらでかき回している時に、セラピューティークなものを感じます。 ー レノベーションにあたってワークスペース以外で絶対ほしかったものは何? 食洗機。それと換気扇。我家は外に換気するタイプのものを着けられなかったので、炭で臭いを吸収するタイプを選びました。これもガステーブルと同じWolf製です。 ![]() ー この棚もアンティーク感を感じますね。 この棚の木も、リクレイムの木なのよ。ブルックリンのリクレイムランバーで買って来たの。棚を載せているブラケットも、アンティーク道具を扱うオンラインで買ったの。このブラケット、実は馬具をかけるフックだったみたい。さびていたので、黒のペンキを塗りました。 実は、一つずつ形が微妙に違うので、壁に取り付ける時に大工さんに色々アイデアを出してもらったわ。 ![]() ー レノベーション後のキッチンの中でお気に入りスポットを敢えて挙げるとどこ? レノベーションで窓も変えたのだけれど、キッチンからこの窓を通してみる外の眺め。マンハッタンの景色って高層ビル群を思い浮かべる人も多いと思うけど、この窓から見える眺めは、ストリートレベルのニューヨークライフが間近で切り取られている感じなの。オーソドックスユダヤ教の人達が通ったり、子供と歩いているお母さんや、イエローキャブが通ったり..。特に週末はニューヨーカーの生活を垣間みれる。窓から入る日の入り方も一分ずつで変化していくのよ。 窓を変えた理由は開き難かった、という機能が理由だったのだけれど、こんなに楽しめると思っていなかった。 ![]() ー 特別な時に作る手作り料理はなに? 煮込み料理かな。ラムシチューやショートリブの煮込み。ごちそう感があるでしょう。 ー 良く作る料理は? 魚料理。調理方法はフライパンで焼くことが多いかな。時々、味噌粕漬けなども作ります。 ー 食材はどこで買いますか? 基本的にグリーンマーケットを中心に買い物をします。週末に、ユニオンスクエアマーケットに行って、日曜日にはコロンバスアベニューのグリーンマーケットで買い足して。そこでないものは、近所のフェアウェイ、ホールフーズ、トレーダージョーズで買います。 グリーンマーケットで必ず買うものは卵。その日とれた卵を農家さんが販売しているので新鮮なの。あと小麦粉。デザートを作る時に、グリーンマーケットで買った小麦粉で作ると美味しい気がする。スーパーで売っている小麦粉よりも、製粉してから時間が経っていないんだと思う。メイプルシロップや蜂蜜もグリーンマーケットで買います。あとガーリック。毎回同じ農家さんから買っているのだけれど美味しい。 マーケットで買うのは作っている人の顔が見えるからかな。自分が作ったものをお客さんに一生懸命説明していて、そういうところに農家さんの情熱を感じる。 魚もグリーンマーケットで買って、あとはシタレラでも買います。シタレラには週三回以上行きます。売っている人の魚に対する知識がホールフーズよりも高いし、客側の立場に立ってくれているような気がする。注文すると良い部位を探してくれたり、お客さんから「この魚はどうやって食べたらいい?」という質問がでても応えられたり。 トレーダージョーズは質に対して価格がお手頃だし便利ね。トレーダージョーズで私がわざわざ買うアイテムはストアブランドのブルターニュ産のバターが美味しくて好き。あと同じくストアブランドの特定フレイバーのヨーグルト。 ホールフーズには、ホールフーズでなければ買わない、というものは特にないかな。 ワインはチェンバーストリートワインズで買います。そこで働く店員の皆が、ワインの知識があって、料理と予算に合うワインを提案してくれるわ。彼らの、ワインが好きでワインをもっと勉強したいという熱意が伝わってくるお店です。 ![]() ー ニューヨークで良く行くレストランはどこ? 自分で作らないものを出すお店に行くわね。蕎麦こう、や、主人はハサキが好きなので隔週ぐらいに行きます。 でもそことファインダイニングの間のレストランとなると、味と値段が見合わない店が多くて、であれば家で作った方がいいな、と思う。だからリピーターになるようなお店が特にないの。 でも、例えば今日作るのが面倒だから、どこに行こうか、となると、シーフードのマーメイドインかな。何もないアッパーウエストサイドの希望の星。絶対つぶれて欲しくないお店ね。レントが高くて美味しいお店が次々にクローズしているのが残念なのよ。 そうそうキッチンレノベーション中によく通っていた77丁目のミルフィーユのアーモンドクロワッサンは本当に美味しい。毎朝決まった時間に決まったものを食べていたのでお店の人も私達を覚えてくれて、レノベーション時のことを懐かしく思うのは、あのお店の味と、お店の空間にいた時の瞬間かしら。 |